おっさんトモの、音楽生活

日々の生活をちょっとだけ豊かにする音楽。おっさんになった僕(トモ)の30歳から始める音楽生活を紹介します。

鳴るギター、鳴らないギター

どうも、おっさんトモです。

前回の記事で書いたように、最近遊具をゲットした私です。

 

この記事はとても長いので、暇な時にゆっくり読まれることをお勧めします。

なお、伝わりやすいように画像などで説明したかったのですが、絵は一切ありません。

想像力をフル活用してお読みください。

 

私の手に入れた80年製のmorris w-50は、ナットとサドルの調整だけで結構綺麗な音を出してくれている。

以前持っていたM-400に比べると、ボディはしっかりしていてどっちかというとジャキッとした感じの音かな。合板だからか箱なり感は少ないけど、とてもバランスいいし、ピックでストロークすると音量もそこそこある。

 

はたして、この23000円のギターの音は良いのか悪いのか。

 

よく良いギターの説明をするときに耳にするのが、『鳴ります』というものです。ちとこの辺の曖昧な表現が、いつも数値を扱うエンジニアの私には分からなくて、結構調べてみてました。

単板は鳴りやすい、合板は鳴りにくいとか、箱鳴りするとか、馬鹿鳴りする、弦鳴りするとか。音量がでかいのが鳴るギターだとか、倍音が豊かなのが鳴るギターだとか。ある場所では鳴らないギターは楽器ではないとかまで言ってたり。いやいや、そんな事は無いだろうと、楽器だろうと、そんな事を思いながら、鳴るギター、鳴らないギターってどういう事を言うのだろうって考えてたわけです。

ちなみに、私のw-50が鳴るのか鳴らないのかは良くわかりません。結局鳴るとか鳴らないとかってのは相対的なものであって、絶対的な評価基準は無いからです。

 

長い前置きになりましたが、今回は、鳴るギターと鳴らないギターについて、エンジニアとしての私がちょっと違う切り口で考えてみようのコーナーです。

 

まず、そもそも楽器とはどういうものか。

楽器とは、特定の周波数の振幅を増幅して大きな音として出力する道具です。まぁ、厳密には、楽器には演奏が出来なければならないという縛りがあるので、特定の周波数というのをコントロール出来るという条件が加わります。が、鳴りを主題におきますので、今回はプレイアビリティの部分には触れません。念のため。

 

例えば、リコーダー。

吹き口から空気を吹き込むと、その吹き込まれた空気がラビュームというエッジにあたります。

エッジに当たった空気は、様々な周波数の振動を発します。

その振幅を持った空気は、出口に向かって流れますが、この時、ラビュームから出口までの距離(以下管長)と綺麗に重なる波長を持った振幅だけが増幅されます。管長の倍の波長、管長と等しい波長、管長の半分の波長…に加え、僅かですが1.5波長、2.5波長、3.5波長など、波の節が管長に重なったものも増幅されます。このうち、最も振幅の大きな音、つまり、波長が一番長い管長の倍の音が一番大きな音として基準の音になります。

 

これはギターにも言える事で、弦長の倍の波長が増幅されたものが基準の音となり、それに様々な波長の成分が付加されて我々の耳に届きます。

 

さて、ギターという楽器は、リコーダーと違い、弦が弾かれた時点で発せられる周波数が決まります。その弦の振動をナット(またはフレット)とサドルで受け、それをボディとネックで増幅します。ここで、弦振動をどれだけ増幅できるかによって音量が、どの周波数帯を強調するかによって音質が決まります。

 

世の中の鳴るギター、鳴らないギター争論には、この音量を重視するか、音質を重視するかがぐちゃぐちゃになっているようです。音量が出るのが鳴るギター?倍音が豊かなのが鳴るギター?こういう感じで、そもそも鳴るギターってなんなのよ?ってなってるのでしょう。

 

ここで、とにかく音量が出るのが良いギターと考える場合。(多分、ほとんどの場合こちらのことを言ってる気がします。)

音量というのは、波の振幅を大きくするということです。どういうことかと言うと、弦自体の振動をきちんと受け止めつつ、その振動をネックやボディに伝え、板自体や箱の中の空気を振動させて大きくして出力するということです。一番大きな音とが聞こえるのはサウンドホール前だと思うので、一番増幅されるのはボディ内の空気を振動させる時ですね。空気を振動させるにはボディの板が振動しなければなりません。ボディの板が振動するには、ブリッジやネックがきちんとボディに振動を伝える必要があります。

ネックは、ボディサイドに接続されていますが、ボディサイドからの増幅に比べれば大きな振動が期待できるボディトップからの入力であるブリッジが重要と言えるでしょう。また、ボディに効率良く振動を伝えると考えると、ネックは弦振動を殺さないように硬いべきだと思います。ボディ自体は、あらゆる周波数に対して柔軟な振動をすることが望ましく、きちんと振動を空気に伝えるだけの剛性と、振幅を大きくする柔軟性が必要です。その2つのバランスがいい単板という素材が、大きな音量を狙うギターに使用されてきた理由だと思います。接着剤で貼り合わせた合板は剛性は上がりますが、柔軟性を犠牲にしますから、どうしても振幅は稼ぎづらいですよね。

 

さて、音質がいい(これまた微妙な表現ですが)のが鳴るギターだとした場合。

倍音が豊かとか、低音がよく出るとか、そういった音質に関わる要素は、ギターにとっては非常に多様です。つまりは、どの部分を強調して増幅させたいか(どんなキャラクターの音にしたいか)があって、その狙いを構造や材質によってコントロールしているという事です。前者であれば、ボディサイズ、ブレージング、板厚など、形状に関する事ですし、後者であれば木材の種類や単板、合板の選択でしょう。場合によってはある周波数を削るためにわざと鳴りにくい構造をとったりもするかもしれません。ある人はそれを鳴らないと表現するかもしれませんが、別の人は倍音が綺麗で鈴鳴りだと表現するかもしれません。

 

結局は、鳴るか鳴らないかは一概に言えるものではなく、どのような音を求めるかによって変わるという事です。

(さらに言うと、増幅され発せられた音がどのように演奏者や聴き手に伝わるかと言うのも重要な要素ですが、今回は割愛します。ただし、かの高級バイオリンStradivariusが、演奏者に対する音の指向性特性が特異だった事から、鳴る議論の要素としては非常に重要とは考えます)

 

では、楽器としての実力(優劣)は『鳴る』などといった簡単な基準によって判断することができない、というとそうでもないと思います。

はじめに戻りますが、楽器というのは、特定の周波数の振幅を増幅して大きな音として出力する道具といいました。特定の周波数というのが、楽器を楽器たらしめる要素であり、増幅させたい周波数がきちんとコントロールできるかというのが楽器としての生命線とも言えます。よく、音抜けとか音の分離と聞くのもこの事で、必要のない雑味を取り除いて、いかに必要な振動だけを十分に増幅できるか。が重要なのです。そこに明確な狙いがあり、あえて味わいや趣を残すのは楽器として優秀な部類に入るでしょう。

 

さて、私のw-50ですが、オール合板、ボディしっかりめの作りなので、つま弾いた際の音量は小さめな印象です。ただ、その分倍音が綺麗で、低音から高音までのバランスが良いです。ストロークは歯切れよく、弦の振動を殺さないからか音量は大きめ。ボディがビリビリ振動してる感じは少ないが、張りのいい音がします。

これが果たして鳴るギターと言うのか言わないのかはわからないですが、少なくとも23000円の価値は十二分にあったと感じでいます。

 

さて、今回は鳴るギター、鳴らないギターについて、たくさんの人が書いている切り口とちょっとずらして攻めてみました。

あえて最後に明記します。

この記事に記載された内容はすべて個人の主観です。